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ご相談事例

ヘルペスに感染

ハンドルネーム みかんさん:(20XX-10)
 私がヘルペスに感染したのは、18歳の時でした。今から10年ほど前、SEXによる感染です。ものすごい痛み&かゆみに襲われて、婦人科に診察に行きました。「ヘルペス」と診断されました。7~10日ほど症状が良くならず、飲み薬と塗り薬をもらい、使用しながらも、なかなか良くならないので、とてもいらいらしたのを覚えています。それから何度か再発を繰り返しています。私にヘルペスをうつした彼のことすごく恨んでいます。体調も良くなかったからか、5年ほど前には顔にも出るようになりました。すごく腫れて、人前に出るのもはばかられ、もう嫌になってしまいます。これってどういうことですか?

長谷川:(20XX-10)
こんにちは、みかんさん。
 多感な18歳で大変な思いをしましたね。でもちゃんと治療されているみたいでしっかり者です。5年前ぐらいから顔にも出るようになったとのことですよね。はっきりとした感染を覚えていないのに顔にも出てきっとショックを受けておられるでしょう。
これってどういうことというご質問にお答えするのに、少し長文になりますが、お許しください。
 ちょっと見てほしいのが、下のグラフなんですが、1999年ころの日本人における抗体保有率です。つまり、症状が出てなくてもこれだけの人がかかっているということです。じつは、戦後は衛生状態が悪かったからか、離乳食で親がこどもに口移しでものを食べさせていたせいか、日本人の9割ぐらいがHSV-1の抗体を持っていました!昔は熱の花とか言って風邪の症状の一つくらいに思われていたんです。

図:HSV型別抗体保有率

 ヘルペスウイルス属には9つくらい種類があるのですが、グラフ上HSVと書いてあるのが単純ヘルペスウイルスのことでつまり、婦人科で扱うのも皮膚科で扱うのも一口で言ってヘルペスです。それでもヘルペスには口唇ヘルペスと性器ヘルペスと出る部位によって呼び名が分かれていますよね。
 主にはHSV-1と呼ばれる1型とHSV-2と呼ばれる2型があるのですが、両方とも初感染では症状が出るのは上半身だったり下半身だったり、接した部分に出ます。
 ところが、ヘルペスウイルスの特徴でもあるのですが、一旦感染すると、神経節にDNAの形で住み込んでしまって、しかも1型と2型では親和性(下図ではaffinity)と呼ばれる神経節との相性があり、1型は、三叉神経節つまり耳の下側から顔面にかけて、2型は仙髄神経節つまり、外陰部を中心とした下半身に住み込みます。
図:性器ヘルペスの再発とそれに関与する因子

 みかんさんは、18歳の時にSEXでこのHSV-2に感染したと考えられます。もしも1型であれば、初感染は大変な激痛やらかゆみが外陰部にあっても、再発するときは上半身つまり、口唇ヘルペスになります。何度か再発を繰り返していますとのことでしたので、2型を持っておられるのでしょう。
 1型については、今の日本では妊婦さんの半分くらいしか抗体をもっていない、とも取れますが、逆に感染してる人は人口の半分いるということになります。幼い時に家族内で感染しても、唇に出ない、一生出ない人もいるのがこのヘルペスと免疫力のバランス関係にあります。
 5年くらい前に口唇ヘルペスが出た時に、数日前とかに誰かとキスをしたような経験がなければ、おそらく、幼少期に持っていた1型のヘルペスが、みかんさんの免疫力が大分落ちて再発したんでしょうね(上の図で言うと、Ganglion trigger説が引き金になっています)。しかし、お話の内容から、口唇ヘルペスでも結構強い症状が出ているので、5年前になんらかのHSV-1初感染を受けているのではないかとも思えます。

みかんさん:(20XX-10)
 長谷川先生、返信ありがとうございました。5年前に口唇ヘルペスになった時は今の彼氏と付き合い始めのころだったかもしれません。もしかしたら、それでうつったのかも。
 実は、彼には口唇ヘルペスのことは言ってあるのですが、性器ヘルペスのことは言ってなくて、もちろんコンドームはつけていますし、体調の悪い時のSEXはしていません。でも今以上の仕事や今後の結婚について真剣に諦めを感じて、、、ネガティブな自分に疲れます。免疫力とのバランスは最悪と言ってもいいかもしれません。はぁ。ただ、彼が最近少し結婚をにおわせるようなことを言ってくるので、いい人だと思うし、好きなので結婚もできればそれはそれで幸せになれるかもしれないと思います。でも、いつどのタイミングで性器ヘルペスのことを言おうか、頭の中がぐるぐるになっています。もしも口唇ヘルペスをうつされたのが今の彼氏なら、少しは切り出しやすいかな。彼に性器ヘルペスのことを伝えるのになにかアドバイス有りますか?自分で考えろって感じですけど。よろしくお願いします。

長谷川:(20XX-10)
 おめでたい感じの話が出てるんですね。いいじゃないですか。
 結婚を考えるのに確かに相手の病気のことは問題ですけど、もっと基本的な人としての信頼関係があってからこそだと思いますよ。今は、抑制療法という毎日バルトレックスを飲み続ける方法もあり、再発率も減少できるし、パートナーへの感染も9割がた減少できます。費用の面とか、病院との距離とか考える必要はありますけどね。こういったカミングアウトに関する質問や体験談は良くありますが、たぶんこうやって質問してくるぐらいの人だから、誠実なんだと思うんですけど、うまくいっている人のほうが多いです。勇気は要りますが、幸せになるための勇気だからこそ意味があるのではないでしょうか。

みかんさん:(20XX-11)
 返信ありがとうございました。彼に同じ苦しみを味あわせたくなくて、こんな私でもいいですか?って聞いてみました。「逆に言ってくれてありがとう。ごめんな。」と言ってくれました。自分の中に閉じこもり、苦悩していたころを思い起こすと、治ったわけではないけれど、普通の生活を前向きにできていることが不思議に、そして幸せに思います。ヘルペスだから完治しなくても、考え方次第なのかな?と最近になって少しだけ心に余裕が出てきたかもしれません。あとは、安い薬が出てくれればなと思っています。

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